「メタ認知」とは何か?心を一歩引いて見つめる力
「メタ認知」という言葉を耳にされたことがある方も多いかもしれません。
以前ご紹介した「リフレクション(内省)」と似ている部分もありますが、目的や活用場面に違いがありますので、改めて整理してみたいと思います。
まず、「メタ(Meta)」という語はギリシャ語で「後ろ」「変化」「超越」などを意味し、「ひとつ上の視点から見る」ことを表します。たとえば、Facebookが社名を「Meta」に変更したのも、「次世代の視点へ進む」という意志の表れですね。
この「ひとつ上の視点」からの認知こそが「メタ認知」です。
つまり、「自分の考え方を、自分で理解し、見つめてみる」という行為になります。
たとえば、誰かと議論しているとき。
その場の自分は相手の話に集中し、自分の意見を返していますね。
それが「認知」の状態です。
一方、メタ認知とは、議論をしている自分自身の言動や反応を、別の場所から見ているような感覚です。
「今の言い方は強すぎたかな?」「ちゃんと相手の話を聞けているかな?」と、自分の心の動きや思考を客観的に観察する。これがメタ認知です。
リフレクション(内省)との違いは?
リフレクションもまた、自分を見つめ直す行為です。ですが、タイミングや目的が少し異なります。
メタ認知は「今この瞬間」の心を観察する力
メタ認知は、現在進行中の思考や感情をリアルタイムで捉え、必要であれば修正していく力です。
たとえば、
- 「今、自分は相手に対してちょっと批判的になりすぎているかもしれない」
- 「この考えは、以前うまくいった時の成功体験に縛られている気がする」
といった気づきは、メタ認知が働いている状態です。まさに、感情や思考を自分自身でマネジメントする土台になります。
リフレクションは「振り返って学びを得る」行為
一方で、リフレクションは過去の出来事を振り返り、そこから学びを抽出するプロセスです。
たとえば、プロジェクトの終了後に「何がうまくいったか?」「改善できる点は何か?」を考えることや、人間関係のトラブルの後に「自分はなぜあのように反応したのか?」を振り返ることなどが該当します。
どちらも自己理解を深めるうえで大切なプロセスですが、メタ認知は「今」に、リフレクションは「過去」に焦点を当てているという点が異なります。
アンガーログ:感情を整えるメタ認知の実践
私が実践している「アンガーログ」は、まさにメタ認知を活用した感情マネジメントのひとつです。
アンガーマネジメントのツールとして、自分の怒りの感情を記録する仕組みです。
怒りを感じたときに、「何に対して」「どのくらいの強さで」怒っているのかをスマートフォンのアプリやメモ帳に記録します。
怒っている“今”の自分を、少し離れたところから見つめるような行為です。
怒りという感情は瞬間的に爆発しやすく、つい反射的に行動しがちですが、メタ認知によって「一時停止」することで冷静さを取り戻すことができます。
そして、1日の終わりや1週間の終わりにログを振り返れば、それはリフレクションの時間になります。
「自分はどんな時に怒りを感じやすいのか」「些細なことに反応してしまっているのでは?」という気づきにつながり、自分との付き合い方が見えてきます。
コーチングセッションで必要とされるメタ認知
メタ認知が最も求められるのは、私自身が関わるコーチングセッションの中です。
- クライアントに安心感を与えているか?
- 有効な問いかけができているか?
- 会話を自分の意図で誘導していないか?
セッション中、常に自分自身の言動を俯瞰するようにしています。
クライアントの話に深く耳を傾けながらも、自分がどのような関わり方をしているかを見失わないことが、質の高いコーチングには欠かせません。
また、クライアント自身にメタ認知を促す問いを投げかけることもあります。
- 「私たちの会話、いい方向に進んでいるように感じますか?」
- 「今、ご自身の気持ちをどのくらい素直に話せていますか?」
一見、変わった質問に思えるかもしれませんが、会話全体を俯瞰し、自己理解を深めるために必要な問いかけです。
日常の中で感情と心を整える力を育てる
メタ認知は、特別なスキルではありません。
日常の中で、ちょっと立ち止まって「今、自分はどう感じているんだろう?」「何を考えているのかな?」と自問することから始めることができます。
忙しい日々の中で、自分の心に余白を持たせる時間。
その積み重ねが、感情に振り回されない、穏やかな自分を育てる第一歩になるのだと思います。
怒りに振り回されずに、信頼関係を築くにはどうすればよいか。
感情を抑えるのではなく、正しく扱う視点を取り入れてみませんか。
日々感じているストレスや違和感、まずはお気軽にご相談ください。

