なぜ「人材育成」をコーチングのテーマにしているのか
「どうして人材育成をテーマにしているのですか?」
そんな質問をいただくことがあります。少し気恥ずかしいですが、その答えは、「未来を創るお手伝いをしたいから」です。
自社のタグラインに掲げている「300年繁栄する人材育成を」という言葉には、こうした思いが込められています。
人が築いてきた価値あるものを次世代へ受け継いでいくのは、制度や機械ではなく「人」であり、その対象は企業やチームにとどまりません。
教育や農業、医療、地域活動、個人事業、スポーツ指導、芸術、音楽など、さまざまな分野で人の営みは続いています。どの場面でも、人の成長や変化、そして情熱がその活動を支えているのです。
事業や組織は常に順風満帆というわけではなく、ときには統合や解消など大きな変化も経験します。それでも、人が共に学び、影響し合う舞台であることには変わりありません。
どのような状況であっても、自らの人生の「主役」として、その舞台に立ち続ける人たちを支えたい。そんな願いから、人材育成をコーチングのテーマとして掲げています。
リーダーも後継者も「成長を求める人」である
このような考えに立つと、先週お伝えした「新任リーダー」と、今回取り上げる「企業の後継者」は、どちらも成長と学びを求める立場にあると言えます。立場や課題の違いはあれど、自分自身と向き合いながら未来へ進もうとする点において共通しているのです。
企業後継者育成の難しさ
後継者育成の支援は、状況によって関わり方が大きく変わります。特に、創業者のオーナー経営者が自社の後継者を育てる場面では、難しさが伴うことが多いように感じます。
大企業のように体系だった育成制度や、帝王学を受け継ぐ体制が整っている場合は別として、多く相談をいただくのは中堅企業における後継者育成です。
会社という船の舵を誰に託すのか。これはとても大きな決断です。「家業だから息子に継がせよう」と簡単に済ませられるものではありません。
候補者が決まるまでには時間がかかります。業績や人望、性格、経験、技量、人脈など、さまざまな要素が考慮されます。評価を下す立場も多岐にわたります。現社長、会長、役員、株主、取引先、銀行、さらには社内の評判も無関係ではありません。
日本の企業では、多くの場合、候補者には一定の育成期間が設けられています。欧米のようにプロ経営者が外部から就任するケースはまだ少数派です。今後、M&Aの加速に伴い変化があるかもしれませんが、現時点では「育てて引き継ぐ」文化が根強く残っています。
後継者育成におけるコーチの役割とは
「後継者育成」「事業承継」というキーワードで検索すれば、多くの専門書やコンサルティングサービスが見つかります。育成の現場には、多様な専門家や関係者が関わっています。
たとえば、会長職となった現経営者はメンターとして、得意先や業界との関係づくりをサポートします。古参の役員はアドバイザーとして、銀行との付き合い方や社内の力学を伝えてくれます。コンサルタントは組織改革や市場戦略などの示唆を提供する存在です。
では、コーチの役割は何でしょうか?
上記の方々が「何を・どうやって(What/How)」を伝えるとするならば、コーチは「なぜ(Why)」を引き出す役割を担います。
- なぜ、自分は経営者になりたいと思ったのか?
- なぜ、この立場を引き受けたのか?
- 経営者として、どんな未来を描いているのか?
- その未来はなぜ大切なのか?
このような問いを通じて、自分のビジョンや価値観、夢、あり方を深く見つめなおす時間を提供するのが、コーチの役割だと考えています。
「自分が主役」であることを見つめ直す機会
もちろん、コーチングだけですべての育成が叶うわけではありません。しかし、自分自身を「人生の主役」として見つめなおす時間を持つことは、後継者にとって非常に重要な基盤となります。
そこにしっかりとした自己認識があれば、WhatやHowの知識・スキルは後からでもしっかり積み重ねていくことができます。判断にもブレがなくなり、経営判断にも自信が持てるようになるでしょう。
後継者育成において、する側もされる側も簡単ではありません。だからこそ、コーチングは双方にとって価値ある関わり方になると信じています。
組織を動かす“ことばの力”を、後継者の強みに。
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