「リーダーシップ」と「ヘッドシップ」──背中を押すだけが上司の仕事じゃない

「リーダーシップ」と聞くと、多くの方は「周囲を引っ張っていく力」や「チームを導く姿勢」を思い浮かべるのではないでしょうか。
では、「ヘッドシップ」という言葉をご存じでしょうか?今回は少しマニアックですが、この2つの言葉の違いと、上司・管理職のあり方について考えてみたいと思います。

目次

「リーダーシップ」と「ヘッドシップ」

リーダーシップとは、職位や役職に関係なく発揮される「人を導く力」です。
目標に向けてチームの士気を高め、メンバーの力を引き出しながら進んでいく。多くのビジネス書でも取り上げられ、組織づくりにおいて重要な概念とされています。

一方で「ヘッドシップ」は、より形式的で、役職や肩書に基づく権限の行使を指します。
組織の“頭”として、決定を下し、責任を負う立場にある人が持つべき力。つまり、トップダウンで物事を動かす力です。

リーダーシップの「使いどころ」を間違えると…

ある営業部門のエピソードをご紹介します。

クレーム対応の報告を受けた上司が、こう言いました。
「では、君のリーダーシップで対応してくれ。明日、報告を頼むよ」

これ、間違ってはいないんです。
でも、部下からすれば「一人で抱え込めということか?」と、やや心細くも感じるやり取りかもしれません。

部下にとってリーダーシップを求められるのは、成長の機会にもなります。
けれど、本来上司が前に出るべきタイミングでその役割を放棄し、「リーダーシップ」で片付けてしまうと、単なる責任の丸投げになりかねません。

ヘッドシップを発揮すべき場面もある

ヘッドシップ──つまり、権限を持つ立場の人が、自ら判断し、方針を示す。
これは特に、次のような場面で効果を発揮します。

  • 緊急時やトラブル対応:迷っている時間が惜しい状況では、明確な指示が必要です。
  • 新規プロジェクトの立ち上げ時:方向性が定まっていない時期ほど、トップの判断がチームの軸になります。
  • 法令遵守が求められる分野:医療や運輸など、曖昧な判断が許されない業務では、確固たる管理体制が必要です。
  • 文化的・伝統的な組織:指導者の判断が尊重される社風のもとでは、権限をもって引っ張る力が安定をもたらします。

上司の役割とは──背中を押す前に、やるべきこと

リーダーシップを発揮してもらうためには、まず上司自身が「支援者」としてのスタンスを示すことが大切です。

「君に任せる。でも、困ったらすぐ相談してくれ。私はこう動くつもりだ」
こう言える上司こそが、信頼され、チーム全体の力を引き出す存在です。

リーダーの背中を押すだけでなく、その土台を整えるのが、上司のヘッドシップとも言えます。

リーダーシップ研修で見えてくる組織の課題

私たちは、リーダーシップを「発揮するもの」と同時に「引き出すもの」と捉えています。

部下に任せるだけではなく、上司自身がどうあるべきか──
「ヘッドシップ」とのバランスを考えることで、組織のリーダー育成はより実践的になります。

現場でありがちな悩みやモヤモヤも含めて、研修やワークショップで一緒に整理してみませんか?

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組織の中でリーダーシップをどう発揮し、どう支えるか。
現場で実際に起きているシーンをもとに、貴社にあった研修プログラムをご提案しています。
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この記事を書いた人

安藤 秀樹のアバター 安藤 秀樹 株式会社ドリームパイプライン 代表取締役

株式会社ドリームパイプライン 代表取締役
1980年、新卒で日本NCR株式会社にてキャリアをスタートし、以来一貫して外資系IT企業に勤務。営業、営業企画、マーケティング、製品開発、製品管理、市場開発、米国本社勤務、事業部長、等の領域でマネジメント職を経験。   
2001年、日本NCRを退職後、米国、ドイツ等を本社とする大手IT企業数社の日本法人にて要職を歴任。
2013年より、組織の人材育成、組織活性化のためにコーチングを学び始め、プロフェッショナルコーチ認定資格を取得。修得したコーチングスキルを多様な価値観が求められる外資系IT企業におけるマネジメントに活用しながら(社)日本スポーツコーチング協会の認定コーチとして、高校、大学のスポーツ指導者へのコーチング活動を実施。
2015年から、米国のスタートアップ企業の2社の日本代表を歴任し2021年12月退任。人材育成支援を目的とし、株式会社ドリームパイプライン設立。
著書 『ニッポンIT株式会社』   https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/
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「実践経営・リーダーシップ」部門、
「ビジネスコミュニケーション」部門、「職場文化」部門

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